最近、なんだか寝付きが悪い。
夜中に起きてしまうなどの睡眠に悩んでいないでしょうか?

この症状は様々な要因により起こるものの、朝食を抜かずに食べることは睡眠リズムを改善する上で大切です。
今回、管理栄養士が睡眠と朝食との関連性とともに、睡眠の質を整える効果があると期待されている栄養素も紹介したいと思います。

睡眠の質と体内時計

寝不足

《体内時計がカギ?》

私たちは規則正しい生活をしていると、時刻を見なくても、ほぼ同じ時間に就寝・起床することができます。 これは、私たちの脳の中にある体内時計で調節されることがわかってきています。
しかし体内時計の周期は、私たちの社会的なリズムである24時間(地球の自転)よりも長いため、毎日このズレを合わせていく必要があります。 うまく調節できなかった場合、眠りが浅くなったり、寝付けないなどの睡眠不足が起こります。

《体内時計を上手く調整するには?》

体内時計は、脳の中に存在する中枢時計と心臓や腎臓などの体内に存在する末梢時計の2つで形成されています。
中枢時計は、朝に太陽の光を目で感じた刺激が脳に伝わり調整され、末梢時計は、光以外の各臓器が受ける刺激(食事や運動など)で中枢時計を介さずに調整されます。

このように、体内時計は様々な要因により調整されています。その中でも、今回は食事の中でも特に重要な、朝食に焦点を当てて説明します。

体内時計を整える朝食

朝食風景

《朝食のベストタイミングとは?》

毎朝、同じ時間に朝食を摂ることで、規則正しい生活のリズムを作るきっかけとなります。定時に朝食をとることで、 末梢時計の調整を行うことができますので、朝食の欠食は避けた方がよいでしょう。また、朝からエネルギーを補給することで1日を活動的に過ごせるので、日中と夜にメリハリができます。
そのため、夕方になると疲れやすくなり、入眠しやすくなります。

《効果的な朝食とは?》

朝食のタイミングだけでなく、食べる内容も変えることで、さらに効果は上がります。朝食で一番大切な栄養は、脳のエネルギーの炭水化物です。
と言っても、炭水化物をエネルギーに変えるためには、他の栄養も必要です。例えば、ご飯などの主食、スクランブルエッグ、あるいは焼き魚などの主菜、簡単な野菜サラダなどの 副菜をそろえた、3点セットの定食スタイルの食事が理想的です。
朝は仕事や学校などの準備で慌ただしいため、簡単に用意できる献立にすると長続きしやすいでしょう。 夕食のおかずや小鉢、味噌汁を朝食の分まで多めに作り、朝の調理の負担を軽くしておくこともおすすめです。

特に意識したい、2つの栄養素

朝食をとることで末梢時計の調整が行われますが、その中でも特に意識したい2つの栄養素をご紹介します。

栄養素

《栄養素1:たんぱく質》

脳の中にあるメラトニンという物質が分泌されることで、眠気を感じるようになります。
このメラトニンは、アミノ酸のトリプトファンを原料にセロトニンを経由して作られます。この原料であるトリプトファンは、肉類、魚介類、卵、大豆製品などの 良質なたんぱく質に含まれていますので、日々、適量を摂取することがおすすめです。

1食あたりの目安としては、肉類や魚介類は「指を含まない手の平のサイズ・厚み」、豆腐は「指を含まない手の平のサイズ・2倍の厚み」です。
なお、卵は単体で適量のたんぱく質を摂取するのは難しいため、肉類、魚介類、大豆製品と組み合わせていくのが理想です。 例えば、朝食にスクランブルエッグを主菜とする場合は、ご飯の上に納豆などをプラスすると、1食の適量に近づけることができます。

《栄養素2:魚油》

魚油は魚に含まれている脂質の油で、脂肪酸により構成されています。この脂肪酸の構成の違いにより、飽和脂肪酸と不飽和脂肪があり、 魚油は不飽和脂肪酸を多く含みます。
さらに、不飽和脂肪酸にはn-3系とn-6系があり、特にn-3系脂肪酸に体内時計を整える効果が見られたという研究報告があります。これは、n-3系脂肪酸が血糖値を 上昇させる働きがあるからとされています。また、血糖値の上昇を抑えるために、膵臓からインスリンが分泌されることで、末梢時計を介して体内時計が調整されます。

魚油を摂る方法としては、油を落とさない調理法である刺身などで食べることが理想的ですが、現代のライフスタイルを考慮すると、 ノンオイルのツナ缶などの缶詰を利用するのが便利です。例えば、手でちぎったレタスなどでサラダを作り、ノンオイルのツナをトッピングすることで、 朝でも簡単に魚油を摂り入れることができます。

朝食を食べる習慣をつけよう

朝食風景

体内時計と睡眠には密接な関係が示されているものの、それらを取り巻く要因は数多く考えられます。その中でも、不眠に悩まされ、朝食を欠食しがちだった方は、 栄養バランスの整った朝食を同じ時刻に食べることで、体内時計を整えるきっかけになるかもしれません。参考にしてみてくださいね。

著者:ウィリアムズ早苗(うぃりあむず・さなえ)

管理栄養士。大学卒業後、食品会社にてメニュー開発を経験。現在はオンラインでの栄養指導や、メディアでの執筆をおこなっている。 私たちが抱える、食や健康に関しての問題点に注目し、解決の糸口となるようなお手伝いをすることをモットーにしている。

【参考文献】

「睡眠・覚醒リズム障害」(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/informan/heart/k-02-006.html

「睡眠リズムを整えるには」(国立精神・神経医療研究センター)
http://sleepmed.jp/platform/entry4.html

「眠りのメカニズム」(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-002.html

「アミノ酸」(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-001.html

「肝臓時計の新規同調因子として働くインスリンと生活習慣病予防腹時計の大切な働き」(J-stage)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/51/8/51_518/_pdf

「朝の光と朝ごはん- 体内時計の時刻リセット -」(東京都大学院理学系研究科・理学部)
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/event/public-lecture16/pdf/fukada.pdf